危うい「資産所得倍増プラン」 円安加速、
危うい「資産所得倍増プラン」 円安加速、国債安定消化にリスク【けいざい百景】
岸田文雄首相が「資産所得倍増プラン」を打ち出している。「貯蓄から投資」を促し、経済を活性化するのが狙いだ。ただ、日本経済と企業の成長性が乏しいままでは個人マネーが米国株などに流出し、円安を一段と加速しかねない。また、家計の貯蓄が支えてきた日本国債の安定消化の構造を突き崩すリスクもはらむ。(時事通信経済部 編集委員・宮木建一郎)
【図解】家計の金融資産構成割合
◇市場と関係修復狙う
「インベスト・イン・キシダ(岸田に投資を)」。首相は5月上旬、英ロンドンの金融街シティーで講演し、看板施策「新しい資本主義」の目玉として、倍増プランを突如打ち出した。
日銀によると、2021年3月末で日本の個人金融資産約2000兆円のうち、54%が現金・預金で滞留。株式は10%にとどまり、米国(38%)との開きは大きい。この巨額貯蓄が株式などの投資に回り、投資先企業が成長すれば、家計には株の値上がり益や配当が還元される。こうした好循環を目指すのが倍増プランで、6月上旬に閣議決定した「新しい資本主義」実行計画は、年末までに具体策をまとめると明記した。
検討対象に挙がるのは、「一般NISA」で年間120万円、「つみたてNISA」で同40万円の非課税投資枠の大幅拡充だ。65歳未満となっている個人型確定拠出年金(iDeCo、イデコ)の加入可能年齢も引き上げる方針だ。
昨年秋に発足した岸田政権は、競争原理を重視する新自由主義が格差拡大を招いたとの問題意識に立ち、分厚い「中間層」の復活を目指す分配戦略を重視。分配の財源として富裕層への増税となる金融所得課税の強化を掲げたため、「反市場主義者」と警戒されて「岸田ショック」と呼ばれる株価下落を招いた経緯がある。
政権は倍増プランによって、悪化した市場との関係修復も狙う。野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「株式市場を敵に回す姿勢から、市場を味方につける戦略に一気に転換した」と評価する。
◇キャピタルフライトの恐れも
ただ、倍増プランが現金・預金として眠る個人金融資産を呼び起こしたとしても、その投資先が日本株などの円建て資産に向かう保証はない。日本経済は「失われた30年」と呼ばれる長期停滞にあえぎ、低成長が当たり前になっている。企業の新陳代謝も進まずに、米国のアップルやアマゾン・ドット・コムのような巨大IT企業も生み出せていない。
若年層を中心に米国株投資への関心は広がっており、ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次チーフエコノミストは「日本経済や企業に元気がないと、個人マネーは海外に向かう」と危惧する。規制改革や構造改革を進め、企業の成長力を高めない限り、倍増プランは個人金融資産が海外に流出する「キャピタルフライト(資本逃避)」につながる恐れがある。
倍増プランには、みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミストも「円安の起爆剤」となる危険性を指摘する。家計が現金・預金を取り崩し、外貨建て資産に投資すれば、円を売ってドルなどを買う動きが広がり、円安の勢いは一段と加速する。資源など輸入価格の高騰を助長し、国民生活に重くのしかかることになる。
また、国の借金である国債残高が約1000兆円に上り、先進国で最悪水準にある日本の財政を支えているのは、家計の巨額貯蓄だ。銀行は家計から預かった資金を運用するために国債を購入している。さらに、日銀の当座預金にも回って大量の国債購入に充てられている。家計の貯蓄過剰を資金不足の政府が借りる形で、国債が安定消化されている。
しかし、「貯蓄から投資」が進むと、政府は新たな国債の買い手を見つけてくる必要がある。現在のような低い金利では、海外投資家は購入しないため、より高い金利が求められ、利払い費の増加で財政悪化が一段と進みかねない。唐鎌氏は「国債の安定的消化の構造を、わざわざ自ら揺らしにいく危うさがある」として、倍増プランがもたらすリスクに警鐘を鳴らしている。
◇「貯蓄偏重」は経済停滞の結果
みずほ銀行の唐鎌氏に「資産所得倍増プラン」の問題点について聞いた。
―個人金融資産が現金・預金に偏るのはなぜか。
家計の金融リテラシー(活用能力)が低いから、現金・預金が多いというわけではない。日本経済は1990年代後半からデフレとなり、成長率も低く、国内に収益率の高い投資機会が少なかった。わざわざリスクをとってリターンの低い投資をするよりも、現金・預金で持つ方が安心というマクロ経済環境だった。現金・預金が多いから経済が成長しないのではなく、経済の停滞に合わせた資産構成が現金・預金だったという結果にすぎない。
―資産所得倍増プランの評価は。
投資を促進しても、現在の経済状況では対象として円建て資産を選ぶ人は少ないのではないか。日本の成長率は圧倒的に低いし、成長志向の経済政策も進めていない。日本人は合理的な根拠ではなく、空気で動きやすい。周りの人が外貨建て資産に投資しているとなれば、せきを切ったように、個人マネーが海外に出ていく可能性がある。政府は過度な円安をけん制しているが、投資へ背中を押した結果、さらに円安が進むリスクを把握しているのだろうか。
―国債の安定消化も危うくなるのか。
家計の現金・預金は「死に金」とも言われる。しかし、銀行部門を通じて日銀の当座預金に流れ、日銀が国債を買っている。それが倍増プランによって、現金・預金からリスク性資産に向かえば、誰が国債を買うのか。外国人投資家だとしても、今の低利回りでは買ってくれない。「民間銀行―政府―日銀」のトライアングルで盤石な国債消化の構造を、わざわざ人為的に手を入れて崩しかねない。このトライアングルを安定的に解消するには、景気を良くすること以外にない。トライアングルを崩すだけでは、国債価格の下落などさまざまな問題が生じる。
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