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「安倍1強」政治、突然の終幕 歴代最長7年8カ月

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安倍晋三首相が28日、辞意を表明した。第1次政権退陣時と同様、自身の持病が悪化し、職務を継続するのは困難だと判断した。24日に第2次政権発足からの連続在職日数が2799日となり、大叔父の佐藤栄作を抜き歴代最長になったばかり。この間、経済政策「アベノミクス」や外交、安全保障政策などに取り組んだ。一方で「モリカケ」問題などスキャンダルも続いた。最近では、新型コロナウイルスを巡る対応でたびたび批判を浴び、激務から健康不安説が飛び交っていた。第2次政権以降の7年8カ月を振り返る。(共同通信=松本鉄兵)  ▽異例の再登板  民主党(当時)から悲願の政権を奪還し、安倍首相が異例の再登板を果たしたのは2012年12月26日。記者会見で「一日も早く結果を出し、国民の信頼を得ていきたい。二度と不安を抱かせることのないようにしていきたい」と力を込めた。翌年夏の参院選で、衆参両院の「ねじれ」を解消した。  力を入れたのが経済対策だ。デフレからの脱却を最大の目標とし、日銀による大規模な金融緩和、機動的な財政出動、民間投資を促す成長戦略「三本の矢」を打ち出した。
 首相は「全国津々浦々まで、景気回復の実感を届けたい」と強調。特に「異次元」と言われた金融緩和は円安・株高をもたらした。  消費税は14年4月と19年10月の2段階で10%に引き上げた。  外交面では「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」を掲げた。外務省によると、第2次政権発足以降、首相が訪問した国・地域は延べ176に上った。米国との関係強化を図る一方、昨年6月には、現職首相として41年ぶりにイランを訪問。ロウハニ大統領との会談で、核開発を巡り激しく対立していた米国との対話を促した。  ▽1強の慢心  戦後の安保政策の転換となったのが、15年9月に成立した安全保障関連法だ。歴代政権が禁じてきた集団的自衛権行使を可能にするもので、憲法学者から「違憲だ」との声が噴出した。国会周辺では連日、大規模な抗議集会が開かれ、衆院での採決強行は、内閣支持率の下落を招いた。  知る権利の侵害が懸念された特定秘密保護法や、内心の自由を脅かしかねないと指摘されていた「共謀罪」法などでも採決強行が繰り返された。政府・与党の強気の姿勢は「安倍1強の慢心」と捉えられた。

 

「安倍1強」の源泉となってきたのが、国政選挙での連続勝利だった。衆院選は、政権復帰を果たした2012年を含め3回、参院選も3回戦い、求心力を維持してきた。  3回の衆院選で、自民党は計280~290議席台を得て大勝している。小選挙区自民党候補に投じられた票はいずれも有効票の50%に満たなかったが、議席占有率は70%を超えた。  投票率は、2014年に小選挙区で過去最低の52・66%を記録するなど低調が続いた。  政権の長期化と1強政治の弊害が一気に表面化したのは17年ごろからだ。南スーダンPKO部隊の日報隠ぺい問題の他、森友学園問題では、昭恵夫人が一時名誉校長に就任していた小学校予定地として、国有地が8億円余り値引きされていたことが明るみに。  加計学園問題では、国家戦略特区制度を活用した獣医学部新設計画に首相官邸が関与したとの疑惑が持たれた。学園の理事長は、首相の長年の友人だった。
 首相が主催し、公費で賄われる「桜を見る会」では、首相の地元後援会員が多数招かれていたことが分かり「私物化」との批判が巻き起こった。  都合の悪い公文書の改ざんや廃棄、隠ぺいが相次いだのも安倍政権の特徴だった。首相官邸の強い人事権を背景に、役人が官邸の意向を先回りして推し量る実態も浮かび上がった。「忖度(そんたく)」という言葉は、17年の流行語年間大賞に選ばれた。   ▽レガシー  経済対策に力点を置いてきたが、実際はどうだったのか。政府有識者らによる研究会は今年7月、第2次政権発足後に始まった景気拡大期間が18年10月に終わったと認定。戦後最長記録である「いざなみ景気」(02年2月~08年2月の73カ月)にわずかに届かなかった。  この期間の実質成長率の平均は年率1・2%程度にとどまり、研究会の吉川洋座長は会見で、大企業の収益が好調で雇用環境も良かったが「賃金は上がらず消費も伸びなかった」と分析した。

 

 

首相が意欲を示していた憲法改正や、北方領土問題、北朝鮮による日本人拉致問題の解決は実現しないまま。来年9月の自民党総裁任期切れまでに達成し得る唯一の政治的遺産と見られていた東京五輪パラリンピックは、新型コロナウイルスの感染拡大で今年3月、今夏開催の延期が決まった。  2次政権発足以来、危機管理を最重要課題の一つに挙げていたが、新型コロナでは失策が目立った。突然の全国学校一斉休校要請や、アベノマスクと揶揄(やゆ)された布マスクの全世帯配布、全国民への一律10万円給付や「Go To トラベル」で迷走が続いた。  感染拡大が続く中、通常国会閉会翌日の6月18日に記者会見を開いて以降、安倍首相が国民の前で語る機会は減少。体調不安説が流れ始めたのはこの辺りからだった。  今月17日と24日には、東京・信濃町の慶応大病院を訪れていた。  「病気と治療を抱え、体力が万全でない苦痛の中、大切な政治判断を誤る、結果を出せないことがあってはならない」
 28日夕、記者会見した安倍首相は、今月上旬に潰瘍性大腸炎の再発が確認されたと明かした上で、辞任を決断した理由を語った。

 

 

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