与党、23年度税制改正大綱を決定
自民、公明両党は16日、2023年度与党税制改正大綱を決定した。最大の焦点となっていた防衛費増額の財源は、法人税、所得税、たばこ税の3税の増税で賄う。岸田文雄首相が指示した防衛力強化に向けた1兆円強の増税のほか、減税幅の縮小や追加徴税といった負担増を求める内容が多く、増税色の濃い税制改正となった。
3税の増税時期については「24年以降の適切な時期」とし、与党内や閣内から増税慎重論が噴出する中、具体的な明示を見送った。
法人税は税率を変えず、本来の税額に4~4・5%を上乗せする。所得税は税額に1%を上乗せして防衛費に充てる目的税を新設。東日本大震災の復興財源として所得税額に上乗せしている復興特別所得税の税率を2・1%から1%引き下げて当面の所得税負担は据え置く。上乗せ期間は37年末までの期限を延長。延長期間は「復興財源を確保するために必要な長さとする」とし、全体では実質的な増税となる。たばこ税は1本換算で3円を段階的に引き上げていく。
この3税の増税によって防衛費を国内総生産(GDP)比2%に引き上げる27年度までに1兆円強の財源を確保する見通し。
焦点のひとつだった少額投資非課税制度(NISA)の見直しは、制度を恒久化したうえで、投資枠の上限を年間360万円、生涯で1800万円に引き上げる。年間所得1億円超で税負担率が下がる「1億円の壁」を是正するため、所得が30億円を超えるような超富裕層に対する課税強化も盛り込んだ。200~300人程度が課税強化の対象となる見通しだ。
自動車重量税を環境性能に応じて軽減するエコカー減税は、半導体不足で納車が遅れていることに配慮し、23年末まで現行の減税措置を据え置く。24年以降は段階的に燃費基準を厳しくして減税対象を絞り込み、電気自動車(EV)など環境性能の高い電動車の普及につなげる。
一方、二酸化炭素(CO2)の排出量に応じて企業などに負担を求める炭素税の導入は先送りした。ウクライナ情勢の緊迫化を背景にエネルギー価格が高騰する中での新たな課税は難しいと判断した。
岸田首相の看板政策「新しい資本主義」の柱となるスタートアップ(新興企業)育成に向けては、資金支援を必要とする新興企業に投資した場合に所得税の一部を課税対象から外すといった優遇措置を導入。高度な人材育成を促進するため、大学や高等専門学校の設立を資金支援した企業に対する優遇策も盛り込んだ。
法人税の引き下げ競争に歯止めをかけるために各国共通の法人税の最低税率を「15%」とする国際合意を踏まえ、グローバル企業の最低税率を15%にする新たな制度を導入することも明記した。政府が出産家庭に計10万円相当を支給する「出産・子育て応援交付金」については、24年度以降の継続に向け「安定財源の確保について早急に検討を行い、結論を得る」とした。【高田奈実】
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