政権に痛手
組織委の森会長辞任意向 政権に痛手、五輪開催に向け調整困難に
東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が女性蔑視ともとれる発言の責任を取る形で辞任の意向を固めたことで、菅義偉(すが・よしひで)首相は大きな痛手を負うことになる。森氏を失ったことで今夏の五輪実現に向けた調整が難しくなるばかりでなく、野党は森氏発言を受けた一連の対応を政権の「失点」として追及するとみられる。
政府はこれまで、組織委は政府と別組織だとして、森氏の進退については言及を避けてきた。首相も国会審議で「組織委は公益財団法人だから、首相として(森氏の進退を)主張することはできない」と語ってきた。
ただ、水面下では森氏を慰留したい意向がにじんでいた。関係者によると、加藤勝信官房長官が発言直後に森氏に電話したほか、森氏に近い政府高官も「森さんは奥さん、娘さん、お孫さんに叱られたって。まあ、反省しているわけだから…」と語っていた。
政権は五輪成功で政権浮揚を図り、年内の衆院選に向け弾みをつけたかった。森氏の辞任で五輪のイメージ悪化を食い止めることができても、国際オリンピック委員会(IOC)や国内の政財界ににらみを利かせることができる森氏という存在を欠き、開催直前になって不確定要素が生じかねない。
とはいえ、国会審議では、野党議員が連日のように森氏の発言を批判。米国の婦人参政権運動にちなんだ白のスーツや白いバラを身に着け、口々に森氏の辞任を求めた。
組織委幹部は「五輪をつぶし、政権をひっくり返したい人たちの政局含みの動きが際立っている」といらだちを強めた。だが、政府が表立って森氏を擁護すれば、野党が「政権は女性蔑視を容認している」としてさらに攻撃を強めることは目に見えていた。
このため、首相は橋本聖子五輪相に森氏をいさめるよう指示し、自身も国会審議で「五輪・パラリンピックの重要な理念である男女共同参画とは全く異なるものであり、あってはならないものだ」と強調。各閣僚も記者会見や国会審議では森氏の発言を批判する立場を取り、森氏を追いつめる結果ともなった。
森氏辞任で五輪に向けた期待がしぼみ、新型コロナウイルスの感染状況が思うように改善しなければ、開催断念も選択肢となりかねない。そうなれば政権にとって致命傷となり、首相は苦境に立たされることになる。(杉本康士)
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