「損して得を取る」
イカに自制心があった…「損して得を取る」ことができると実験で明らかに
ある種のイカは大きな脳を持つ動物と同じくらいの自制心を発揮することが、実験で明らかになった。
あとからもっとよいエサをもらうために、目の前にあるエサを食べるのを我慢したのだ。
同様の実験は、認知能力の発達を観察するために人間の子どもに対して行われる。
研究者によるとコウイカはチンパンジーやカラス、オウムなどの動物と同じように、衝動をコントロールできる可能性があるという。
2021年3月3日に発表された論文で、研究者は、6匹のコウイカがより大きな報酬のためにどれくらい我慢できるかを観察する実験を行った。
この実験は、人間の子どもに対して行われる、報酬としてのプレッツェルをすぐに受け取るか、それとも後からもらえるマシュマロなどのもっとよい報酬のために我慢できるかを観察する「マシュマロテスト」の水中版だと言える。
コウイカには、エビのかけらとそれよりもっとおいしそうな生きたエビが提示され、エビのかけらをすぐに食べるのを我慢できれば、生きたエビが与えられる。
以下の動画は、この論文の筆頭著者であり、ケンブリッジ大学心理学科の研究者でもあるアレクサンドラ・シュネル(Alexandra Schnell)博士によって撮影された。コウイカが、エビのかけら(右)よりも生きたエビ(左)を好む様子が映されている。
イカの自制心を研究しているアレクサンドラ・シュネル博士によって撮影され、3月3日に公開された。
実験の結果、最も我慢ができない個体でも、生きたエビが放たれるまで50秒は待つことができた。
最も自制心の強い個体は「もっとよいエサのために2分以上待つことができた」とシュネルはプレスリリースで述べている。
この結果は、チンパンジーやカラス、オウムなどのより大きな脳を持つ動物での実験結果に匹敵するものだった。
これは非常に「洗練された行動」だと、ケンブリッジ大学教授で、論文著者の1人であるニコラ・クレイトン(Nicola Clayton)は、プレスリリースで述べた。
「自制するには、『少ない方が、より多くなることもある』ことを理解する必要がある。つまり、目の前の誘惑に屈しないことが、将来的にはよりよい結果につながるということだ」
スタンフォード大学が行った「マシュマロ・テスト」は、子どもに対して、今すぐにプレッツェルなどのちょっとしたご褒美をもらうか、15分間待ってからマシュマロなどのより魅力的なご褒美をもらうか、いずれかを選択させるというものだった。
今回の実験では、賢いコウイカの方が、長く待つことができるのかどうかについても観察が行われた。
シュネルによると「知性の指標となる学習能力が高いコウイカは、自制心も強いことが分かった」という。さらに、同じようなことは人間やチンパンジーで観察されてきたが、霊長類以外で確認されたのは初めてだと付け加えた。
コウイカの知性については度々研究されてきた。彼らは非常に複雑な脳を持ち、皮膚の色素細胞をコントロールし、周囲に合わせて色を変えることができる。
以下の動画で、別の種類のコウイカが皮膚の色を変化させるのを見ることができる。
2016年に発表された研究によると、コウイカは数の感覚を持ち、エビの数の違いを見分けることができるという。
[原文:Cuttlefish passed a version of the marshmallow test, a cognitive study for humans designed to test self-control]
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)
Marianne Guenot
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