違法行為を警戒する声も
日本アムウェイ 14日から勧誘可能に 違法行為を警戒する声も
家庭用日用品などの連鎖販売取引(マルチ商法)を展開する「日本アムウェイ合同会社」(本社・東京都)は13日、違法な勧誘行為をしたとして消費者庁から命じられた6カ月の取引停止期間が終了する。
停止中は会員間のみで取引が可能だったが、14日以降は会員以外への勧誘が再開できる。新年度が開始したばかりの時期と重なり、専門家や消費者庁はイベント開催などにつけ込んだ違法な勧誘行為が活発化しないか警戒している。
消費者庁は昨年10月、社名や目的を言わずに勧誘した▽目的を告げずに誘った相手を密室に連れ込んで勧誘した▽相手の意向を無視して一方的に勧誘した▽契約締結前に書面を交付しなかった――という4種類の違反を確認したとして、同社に6カ月の取引停止命令を出した。
具体的には、ネット交流サービス(SNS)を通じて誘われた「女子会」でハンドクリームを勧めて突然アムウェイの話をされたり、サークルメンバー募集に応募したら事務所に連れられ、後日、しつこく勧誘されたりしたケースがあったという。
アムウェイはアメリカ発祥のマルチ商法の会社で、会員が勧誘により別の会員を増やすことで報酬を得るネットワークビジネスの国内最大手だ。取引を再開するにあたり、アムウェイは経営管理体制などの強化について14日にホームページで公表すると明かした。
広報担当者は「処分を厳粛に受け止め、再発防止策の徹底に全社を挙げて取り組んできた。責任ある企業として信頼いただけるよう健全な事業経営に努めてまいります」とコメントした。
悪質な勧誘行為は後を絶たない。東京都は3月、大学生らを勧誘し、借金をさせて情報商材入りのタブレット端末の販売や、ビジネススクールの契約締結をさせたなどとして、「パイオニア」や「プレジデント」など違法なマルチ商法を展開した3社に特定商取引法に基づく9カ月の業務停止命令を出した。
ただ、マルチ商法における違法な勧誘行為を撲滅できるかは不透明だ。4月は入社・入学シーズンで、人と人との接触が増える時期。国内初の感染確認から3年がたった新型コロナウイルスの自粛ムードも収まりつつある。歓送迎会などを名目としたイベント開催が目白押しになる。
マルチ商法に詳しい西田公昭・立正大教授(社会心理学)は「4月は新しい人間関係ができる時期で、マルチ商法の勧誘が活発になる。春に就職した人が思ったより稼げないと分かって、サイドビジネスとしてマルチ商法を始めるケースもある。一方で、大学に入学して1人暮らしを始めたり、地方から上京したりする時期で勧誘を受けやすい」と注意を喚起した。
その上で「アムウェイを含むマルチ商法は一般的に、違法な勧誘行為について企業側が周知徹底したとしても、勝手に会員が違法な勧誘をしかねない。そのような特性を考えると、半年間の業務停止を受けたからといってアムウェイの会員の皆が法令順守するようになるのかは甚だ疑問だ」と指摘した。
消費者庁取引対策課の担当者は「サークル活動やSNS、マッチングアプリなどを通じ、別のイベントやビジネスなどに勧誘されたら十分に注意してほしい。困ったら消費者ホットライン(電話188)に相談を」と呼び掛ける。マルチ商法は契約書面を受け取った日から20日間以内であれば、原則として無条件で契約を解除できる。【藤沢美由紀、阿部亮介】
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