サンマの内臓
サンマの内臓はなぜおいしい? 旬がもっとおいしくなる話 新鮮さを見極めるコツも
秋の味覚の代表といえばサンマ。近年は不漁続きで“高級魚化”しつつもありますが、やはり食卓で楽しんで秋を感じたいですね。「秋刀魚」とも書きますが、その漢字が当てられるようになったのは大正時代の頃とも。栄養士の和漢歩実さんに聞きました。
「秋刀魚」と書かれるようになったのは“最近”
「サンマ」の呼び名の由来は、諸説あります。細長い魚を意味する「狭真魚(サマナ)」が「サマ」となり、サンマとなったという説。群れを成して泳ぐことから「大きな群れ」を意味する「沢(サワ)」に、「魚」を意味する「マ」を付けて呼んだのが「サンマ」になった、などという説があります。
秋に獲れる刀のような形をした魚ということから「秋刀魚」と書いたり、地域によっては「佐伊羅魚(サイラ)」と呼んだりします。日本国語大辞典によると、明治時代に書かれた夏目漱石の小説「吾輩は猫である」には「三馬」、江戸時代の食に関する書物「本朝食鑑」では「三摩」と記されています。古い書物には「青串魚」との記述も見られ、さまざまな表記が存在しました。
日本食品標準成分表2020年版(八訂)によると、サンマ(生、皮つき)100グラムあたりで脂質25.6グラム、エネルギー量は287キロカロリー。トロ(マグロ)に匹敵する高エネルギーです。サンマに含まれる脂質はDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペタンエン酸)の良質な魚油。多価不飽和脂肪酸のオメガ3脂肪酸で、DHAは脳の活性化、EPAはコレステロールや中性脂肪を減らしたり、血流を促したりする効果が期待されています。動脈硬化などの予防で注目される青魚共通の成分です。
この他、目や皮膚の粘膜を強くして免疫力を高める働きがあるビタミンA(レチノール活性当量)が16マイクログラム、いわゆる「貧血」が気になる人が摂取したいビタミンB12が16マイクログラム、鉄が1.4ミリグラム、カルシウムが28ミリグラムとバランス良く含まれています。ちなみに魚や肉の鉄は「ヘム鉄」と呼ばれます。植物性食品の小松菜やホウレン草、卵や乳製品などの「非ヘム鉄」と比べ5倍の吸収率と言われています。
また、新鮮なサンマは、しっかりと火を通せば内臓も味わい深く楽しめます。これは、サンマが「無胃魚」と呼ばれる胃のない魚で、食べたものを短時間で消化し、排泄できるためです。日中にプランクトンを食べて、夜は何も食べないのがサンマの習性。漁は夜間に行われるため、獲れたサンマの内臓は空っぽの状態。他の魚と比べると苦味がなく、おいしく食べることができるのです。
新鮮な見分け方は次の3つ。尾の付け根や口の先が黄色いものは脂がのり、おいしいと言われています。店頭で見る際はチェックしましょう。
1. 口先と尾:黄色いものを選ぶ
2. 腹:太くてハリがある
3. 目:黒目の周りが透明で澄んでいる
おいしい食べ方としては、やはり塩焼きです。家庭では魚用グリルでパリッと香ばしく焼くのが良いですが、使用しない場合は市販の魚焼き用ホイルを使うとフライパンでもおいしく焼けます。ホイルがなければ、直接焼いても良いでしょう。くっつくのが気になる場合はフライパンに少量の油を引くと、皮がはがれにくくしっとりとした仕上がりになります。サンマから脂分が出てくるので、油の量は適度に調整してください。
いずれもフライパンで焼く時は、焦げやすいので強火ではなく中火~弱火で焼きます。焼き色が付くまで返さずに、じっくりと焼くのがポイントです。そうすることで皮がはがれにくくなります。オメガ3脂肪酸の観点から考えると、グリルよりフライパンで焼く方が、脂の損失が少なめです。
水産庁が2021年7月30日に発表したサンマの漁況(2021年8~12月、道東~常磐海域における海況及びサンマの漁況)についての見通しによると「漁期を通じた来遊量は昨年を上回るものの、一昨年(2019年)を下回る」と取りまとめています。漁獲量は大漁とは言えず、まだまだ価格が高いサンマですが、栄養たっぷりの旬の味覚を味わいたいですね。
Hint-Pot編集部
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